老老介護・認認介護とは?現状の問題と解決策について​

更新日:2024/05/23

記事監修

メモリーケアクリニック湘南 院長​​
内門 大丈 先生

老老介護とは、65歳以上の高齢者が高齢者を介護することです。少子高齢化に伴い増えている老老介護の現状や問題点、共倒れにならないための解決策を紹介します。

老老介護とは?​

老老介護とは、いったいどのような状態を指すのでしょう。

老老介護とは高齢者が高齢者を介護すること​

老老介護とは、高齢者が高齢者を介護するという意味で用いられる言葉です。主に65歳以上の高齢の夫婦や親子、兄弟などのどちらかが介護者であり、もう一方が介護される側となるケースを指します。

老老介護の現状​

厚生労働省の2022(令和4)年国民生活基礎調査1を参考に、老老介護の現状を見ていきましょう。

高齢者介護世帯の割合1

次の表は、「要介護者」と「同居の主な介護者」の年齢の組合せが「60歳以上同士」「65歳以上同士」「75歳以上同士」の推移を表したものです。いずれも年々、上昇傾向となっています。
65歳以上同士のいわゆる老老介護の組合せは、2001年は40.6%でしたが、2022年は63.5%と20ポイント以上上がっています。団塊の世代が2025年以降に後期高齢者となることからも、今後も老老介護の割合は増加すると予想されます。

2022年(令和4年)厚生労働省 国民生活基礎調査を元に作成

介護が必要となった主な原因は「認知症」が多い1

要支援者では、「関節疾患」が原因の1位ですが、要介護者をみると「認知症」が23.6%と最も多く、次いで「脳血管疾患(脳卒中)」となっています。

2022年(令和4年)厚生労働省 国民生活基礎調査を元に作成

認認介護とは​

認認介護は、高齢の認知症患者の介護を、同じく高齢の認知症の家族が行うことです。​

認認介護の割合

介護保険事業所による在宅での認認介護者数を調査2​では、老老介護世帯の10.4%が認認介護状態であったと報告されています。

軽度認知障害(MCI)も増加?

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)とは、認知症ではないけれど、以前に比べ認知機能が低下してきている状態です。2012年時点で、高齢者の約4人に1人は認知症または軽度認知障害といわれています3。今後、アルツハイマー病が増加していくとの報告4もありますので、アルツハイマー病によるMCIの増加も十分予想されます。

老老介護の問題点​

では老老介護では、どのような問題が起こりうるのでしょう。​

精神的・身体的にも疲れてしまう​

高齢介護者は、全身持久力、筋力、バランス能力などの身体機能が低下し、転倒、低栄養、生活機能の低下、閉じこもり、うつなどの要介護状態につながりやすい状況にあることから、介護による精神的・身体的負担が大きくなります。

共倒れになる可能性が高い​

高齢介護者は、若い介護者より介護に費やす時間が長くなりがちです。また、自分自身も疾患を抱えながら介護するケースが多いため、「共倒れ」が起こる可能性が高くなります。

介護者の負担が大きい​

高齢者世帯は地域との交流が少なく孤立していることが多いため、情報不足から福祉サービスや介護機器の活用が充分にできず介護者の負担が大きくなります。高齢で病状に対する正しい理解がもてず適切な手当てが行なわれないため病状が悪化し、介護の負担量が増えることも考えられます。

お金など高齢者自身の問題​

経済的な理由(年金などの収入が少ない場合など)で、介護保険サービスを手控えるケースがあり、十分な支援を受けられない場合があります。

介護保険制度自体に問題​

介護保険制度にも問題があるといわれています。入浴や食事、排泄など介護者一人では負担の大きい作業は、デイサービスや訪問介護などの介護サービスを利用できますが、逆に細々とした家事はやってもらえません。
介護者が男性で、炊事、掃除、洗濯、ごみ出し、お金の管理などの家事のほとんどを妻にまかせっきりにしていたような場合、日常生活を送るうえでの家事は介護以上に負担となってきます。

認認介護はより問題がある​

認知症の人は記憶力や判断力が低下していきます。周囲に助けを求めたり公的なサービスを利用したりすることを検討することも難しくなるかもしれません。公的サービスが利用できないまま、在宅での介護が限界に達してしまうことも考えられます。

老老介護の原因

老老介護はなぜ増えているのでしょうか。原因となる問題を解説します。

少子高齢化​

下のグラフは人口構成を14歳以下、15歳から64歳、65歳以上の3つの年齢区分別の人口比率の推移を表しています。5
14 歳以下は、1950年以降、現在まで減少し続けており、15歳から64 歳までの割合も、1992年をピークに減少し続けています。一方で、1950 年時点で 5%に満たなかった65 歳以上は、増加の一途をたどり、2060 年まで一貫して高齢化率は上昇していくとされています。
少子化が加速し、介護の担い手となる若い世代が減っていることがわかります。

厚生労働白書 平成28年度版 P.6
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16/dl/1-01.pdf
を元に作成

家族構造の変化​

65歳以上の方がいる世帯の世帯構造の年次推移をみると、三世代世帯(子、孫と同居)は大幅に減少し、65歳以上の夫婦のみの世帯や単独世帯は増加1しています。老老介護が今後も増えていくことがわかります。

1,厚生労働省 2022年(令和4年) 国民生活基礎調査 P.4
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/02.pdf
を元に作成

老老介護を防ぐには

老老介護を防ぐために要介護者、介護者ができることを述べます。

健康な生活を送る

要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)ことを目指しましょう。そのためには、介護になる主な原因である認知症、脳血管疾患、骨折・転倒を起こさないような健康な生活を送ることがとても大切です。バランスの良い食事や運動に加え、活動的なライフスタイルを心がけましょう。

地域コミュニティとの関わりを持つ​

地域には様々な介護支援のためのサポートが行われています。これらの情報を得るためにも地域コミュニティとの関わりを持つことが重要になってきます。地域のサロンや行事に参加し、ご近所の皆さんとのコミュニケーション活動を増やすことにも、それ自体が要介護状態のリスク因子である閉じこもりを回避することにもなります。

老老介護、認認介護世帯へのサポート

老老介護、認認介護世帯へのサポートにはどのようなものがあるでしょうか。

地域包括支援センターへ相談する​

地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごすことができるように、包括的および継続的な支援を行うことを目的としています。
どのようなサービスを利用すべきかわからない地域住民に対して、ニーズに適切に対応できるサービスにつなぐワンストップの相談窓口の役割を果たしています。生活上の問題や介護のことなど気軽に相談してみてください。

見守りサービスの利用・ご近所の関係構築をする​

高齢世帯の見守りについては、自治体によって地域の実情に合わせたさまざまな取り組みが行われています。まちづくりセンター、地域包括支援センター、社会福祉協議会などに相談すれば、個々の課題を整理したうえで、関係のサービスにつないでくれます。
地域の支え合いの視点から、要介護状態になっても週1回以上会うことができるような、地域における顔なじみの関係を構築しておくことも大切です。住民が気軽に集い、一緒に活動内容を企画し、ふれあいを通して「生きがいづくり」「仲間づくり」の輪を広げる場所である「通いの場」をつくる自治体も増えてきました。地域の介護予防の拠点となる場所にもなりますので、通いの場に通うことで必要な支援につなぐことができるようになります。

在宅介護サービスを利用する​

介護保険を利用して在宅介護サービスを使いましょう。日中だけでなく、夜間も対応する訪問介護、「通い」「泊まり」「訪問看護」「訪問介護」といった複数のサービス利用を組み合わせることで家族の介護負担の軽減が図れる複合型サービスなどがあります。
また、小規模多機能型居宅介護は、「通い」を中心として、要介護者の様態や希望に応じて、随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせてサービスを提供します。
これらのサービスのほか、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護などからケアマネジャーと相談して必要なサービスを受けることができます。
介護保険の利用を考えている方はお住まいの近くの「地域包括支援センター」に相談してください。

介護施設へ入居する​

在宅でお互いを支えることが難しくなった場合は、介護施設に入所することも考えられます。特別養護老人ホームは、入浴、排泄、食事などの介護、その他の日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行います。
認知症の方には、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)もあります。家庭的な環境と地域住民との交流のもと、介護スタッフによる入浴、排せつ、食事などの介護その他の日常生活上の世話および機能訓練が行われます。ここでのサービスは、利用者がもっている能力に応じて自立した日常生活を営むことができるようにすることを目的としています。小規模なため馴染みの環境を作りやすく、認知症の方でも安心して暮らせるようになることが多いとされています。

まとめ

いつまでも二人で暮らしたい、お互いの面倒を見合いたい。その想いからか、高齢介護者は、外からの介入を容易に受け入れたくないという考えをもつ方が少なくないと言われています。しかし、お互いのためにも地域の実状に応じたさまざまなサービスを上手に取り入れ、うまく利用してはいかがでしょうか。​

(参考文献)
1,厚生労働省 2022年(令和4年) 国民生活基礎調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/05.pdf (最終閲覧日:2023年12月25日)を元に作成
2,在宅介護における認認介護の出現率
https://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_aichi33/05/0519_ron/index.htm (最終閲覧日:2023年12月25日)を元に作成
3,厚生労働科学研究費補助金 認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認 知症の生活機能障害への対応」平成24年度総合研究報告書
https://www.tsukuba-psychiatry.com/wp-content/uploads/2013/06/H24Report_Part1.pdf P.8(最終閲覧日:2023年12月25日)
4,「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 )P6
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/141031/201405037A/201405037A0001.pdf(最終閲覧日:2023年12月25日)
5,厚生労働白書 平成28年度版
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16/dl/1-01.pdf (最終閲覧日:2023年12月25日)を元に作成

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